2011年12月20日火曜日

大学を比較してみる


ドイツの石原です。


今年も残すところ10日ほど。
隈研でも忘年会があったらしいことをメールで知りました。


ミュンヘン工科大はクリスマスの時期から年明け一週間が
冬休みなのですが、

私の入っているスタジオは1月9日が中間講評なので
冬休みであると同時にプレゼン準備期間。

こういうスタジオがある一方で、
なぜかすでに冬休みになっているところもあり冬休みの長さはバラバラです。


さて今回は
シュツットガルトに留学していた隈研の先輩 佐藤さんを尋ねたエピソードと
ドイツ・日本の大学の教育について感じたこと書きます。

私が普段作業している場所はこんな風景です。
ミュンヘンの製図室




天井からぶら下がった怪しい構造物以外は普通の部屋です。


一方、シュツットガルトのILEK(という名前の研究室)は…

UFO?


この研究室はフライ・オットーによって創設された
Das Institut für Leichtbau Entwerfen und Konstruieren
(軽量構造デザイン構法研究所)
なのでこの建物自体もフライ・オットーのモックアップを利用して作られています。


中に入るとさらに心くすぐる模型たちが出てきます。
シャボン玉の原理からでてくる形態

型枠の代わりに風船に吹きつけた繊維強化コンクリートの"卵"

頂点を共有する錐台によるハニカムみたいな壁


外にも
軸が回転することで骨がなくても開く傘(現在は停止)



他にもアダプティブな橋梁のモデル
(積載荷重に相殺する曲げを支持点でかけることで部材の背を減らす)
など紹介しきれない多種多様の模型・モックアップにあふれていました。

(庭に彫刻のようにモックアップが置かれている)

ILEKはドイツの中でもかなり変わっていて、特殊な例です。
シュツットガルト大学も全部がこういう研究をしているわけではない。


比べてみるとミュンヘンはかなり保守な地域で、
大学には情報建築学研究室などの先端的な研究があるけれど、
多くのスタジオが新規性よりは既往の建築の知識に則った設計を教えている印象。


両方の大学に共通しているのは日本の大学よりも施設が充実していること。
そもそも建築学部(学科ではない)なので規模がちがいますが、

TUMでは
・各研究室ごとに製図室
・レーザーカッター、ミルマシーン、A3スキャナー、プロッター
・コンピュータルームには主要なCADとDTPソフトの入ったパソコン
これらが学部生から使える。いいなぁ



日本の教育は欧州から見るとかなり刺激的な建築家を生み出しているけれど、
それは充実した施設とは無関係で教育の方向性にあるように見えます。

日本だと「ここのデザインはこうあるべき」という指導よりは
「この問題に対してどう考えるべきか」という教育を受けた気がします。

私の今いるスタジオはかなり自由に進めていて
個々人で違う成果物が出てきますが、
ディテールまで指示しているスタジオもあるらしい。


うらやましい面もあり、窮屈そうな面もあり。
どちらかが正義ということはないですが、
教育の多様性に触れて各々が相対化されて見えてきたことは、
留学の一つの収穫になりそうです。